嘘で始まる疑似学問
間違いだらけの原典隠し
1.3冊あった原典
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現代の血液型性格分類が始まった「血液型人間学」なるものの原点を確認する。
原点は能見正比古著:「血液型でわかる相性」(青春出版社 1971)にある。
昭和57年(1982)10月20日出版/第198刷を読み込んだ。
この通俗本には、かなりの違和感がある。
時代背景が第1刷の昭和46年(1971)当時と合わないのだ。
有名人の例として1973年デビューの山口百恵や、1977年デビューの松山千春が登場する。
巨人の長嶋茂雄が選手ではなく監督として登場し、1980年の監督解任騒動がトピックとして例示される。
これは改訂版か?
奥付を確認しても改訂版ではない。
なぜ時代が合わないのか?
第1刷を入手して驚くべき事実が判明した。
能見正比古著「血液型でわかる相性」の第1刷と第198刷は、同じタイトルで別々の本なのだ!
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| 昭和46年(1971)9月15日 第1刷 | 昭和57年(1982)10月20日 第198刷 |
| 0200-110100-3822 | 0200-110105-3822 |
書籍コードの二群目が、
110100(第1刷)と
110105(第198刷)で、
これらは違う本ではないか!
しかも第1刷の日付は同日の昭和46年(1971)9月15日だ。
つまり、同年同月同日に2種類の「血液型でわかる相性」が出版されたことになる!
2冊の登場人物を精査した結果、次のことが判明した。
| 1. | 第1刷ではプロ野球の水原茂が中日ドラゴンス監督(現役)だが、第198刷では故人になっている。 |
| 2. | 水原は著者・能見正比古没後(1981)の、昭和57年(1982)3月26日に亡くなっている。 |
| 3. | 従って、第198刷の改訂は昭和57年(1982)3月26日〜10月20日の間であり、能見の没後に何者かが改訂したことになる。 |
なぜ改訂版と表示しないのか?
血液型の相性が良いと書かれた夫婦は離婚し、血液型を間違えて有名人を詳細に解説してしまったからだ。
改定で間違いを隠蔽し、例証する有名人を時代に合った人物に入れ替え、実に29ヵ所
★もの改訂を行った。
血液型人間学の前身
★★は大きな間違いを改訂し、書籍コードを変更して原典を隠した嘘から出発している。
★改訂された1まとまりを1ヵ所としてカウントした。
★★1973年出版「血液型人間学」にて血液型人間学を宣言した。
更に第235刷(1989)を入手して第198刷(1982)と比較すると、15ヵ所もの訂正・改訂を確認した。
A型の特性がO型の特性に変更された部分まであり、血液型人間学の制作手法を如実に物語る。
能見正比古はこれらの書の中で自説を「学説」と呼んでいる。
どうやら「学問」のつもりらしいが、
原典や改定を隠す「学問」★なんて聞いたことがない。
しかも
出典を隠して先行論文★★をパクっているが許されるのか?
学問の作法を無視した、
本が売れれば何でもいい「擬似学問」らしい作法と品格だ。
★能見親子および「血液型人間学」は論文を1本も発表していない。
論文を発表して第三者の検証に耐えうる理論を構築できないインチキ占いだからだ。
それでも「学問」を名乗るのは、「擬似学問」に他ならない。
★★先行論文は1916〜1930年代の学術雑誌等で多数発表された。
これらの同じタイトルで書籍コードが違う通俗本を比較し、
嘘で始まる血液型人間学の正体を確認する。
2.内容紹介
1971年
★出版の同書の冒頭には、この時代
★★に「血液型と性格には関係がある」とする俗説が世間を漂っていたと記述してある。
血液型人事配置をしている会社まであったと書かれている。
その俗説に古川学説(1927)を焼き直して応えたのが、この通俗本である。
作家である能見正比古は豊かな表現力で多数の有名人を例証し、読者の共感を獲得して今日の血液型ブームの基礎を築いた。
★1971年:仮面ライダー登場・日清カップヌードル発売・マクドナルド/ミスタードーナツ第一号店出店
[1] [2]
★★能見正比古以前に、世間には血液型性格関連説は存在した。
■ 週刊女性 1966年7月23日 「医学界でも注目されている指紋と血液型と相性の関係」
■ リカちゃん人形:1967年7月4日発売。血液型をO型に設定。
[3]
■ ゴルゴ13:1968年11月29日発売「ビッグコミック」(1969年新年号)で登場し、A型に設定。
[4] [5]
■ 1970年7月:目黒澄子・目黒宏次共著「気質と血液型」が、現代心理研究会から会員頒布。
[6]
| 内容 | 血液型別に気質・性格・傾向から相性まで分類し、恋愛・ビジネス・親子関係・自己管理等の場面で解説。 |
| 傾向 | 放送作家の著者が幅広い人脈を利用して、有名人の行動やゴシップの一断面を切り取り、自説に都合よく当てはめて例証。相性が良いと例証された夫婦は離婚する。有名人の血液型間違いがボロボロと・・・。 |
| 根拠 | 著者が16歳の時から30年間観察した結果が根拠であり、統計は人気女優ランキングの一つだけ。各所に根拠不明の決めつけや、論理の飛躍が見られる。 |
| 出典 | 古川竹二著「血液型と気質」(三省堂 1932)や、その時代の論文の学的意義を無視して悪用し、自説の根幹部分を成す。 |
| 戦略 | 気質に優劣・善悪を設定し、多数派に価値を置いたマーケティング戦略が組まれる。日本の文化的背景から生じた一般的日本人の気質を、多数派の気質に設定して「優」とし、少数派に「劣」を割り当てる。多数派は性善説で、少数派は性悪説で解説する。 |
| 破綻 | 遺伝子型6分類法を宣言するが、この説は血液型差別を作っただけで破綻する。以降の出版物では表現型4分類法を用いる。 |
後にこの本の読者5千人にアンケートを実施
★し、1973年に“血液型人間学”を名乗り、直後に科学を宣言する。
科学宣言と共に既存の精神医学
★★・心理学
★★★を否定し攻撃を始める。
★
読者5千人のアンケートを、「述べ15万人」のアンケートと称する。
1人平均30問の質問を実施し、15万問の回答を得たということである。
1人で30問答えると、「述べ30人」とカウントする統計があるのであろうか?
[6]
★★
血液型活用学 能見正比古
[7]
「精神科医がAB型気質を理解するとは、とても思えないのだ。
というのは早計かもしれないので、誰かの意見は訊いてみたいとは思うが、ご本人が精神科にじかに出かけられるのは、おすすめしきれない。
誤解誤診されたりしては大へんである。」
■ 能見の血液型人間学は、既存の精神医学を超越した。
息子の言動も含めて別で解説する。
★★★
ビッグトゥモロー81年6月号 能見正比古
[8]
「従来、人間性に関する唯一の学と称する心理学が、大学の文学部にあることを、キミは怪しまないか?
もっとも心理学の中心部が哲学で、あとは神経生理学の下受け(ママ)的現状では止むを得ないとも言えるが……。」
■ これ以外にも心理学者との戦いの歴史があり、あまりに面白いので別に解説する。
しかしこの通俗本では精神分析医:フロイトの“自我”を引用し、自説の根幹である気質説を完成させた。
同様に息子の俊賢も既存の学問を否定しながら、自説を補強できる学説や医学情報は都合よく引用する。
本が売れれば何でもいい、疑似学問らしい恥ずべき作法である。
1刷出版の1971年当時、能見正比古は46歳、息子:俊賢は22歳であった。198刷は正比古の没後(1981)、1982年に俊賢(当時34歳)が改訂した。
3.A型至上主義のマーケティング戦略
能見は日本人の4割を占めるA型に価値を置き、一般的な日本人の特性をA型の特性とし、多数派に「優」を割り当てたマーケティング戦略を組む。
能見は「AO型が日本を支配する」とし、根拠を示すことなくA型の気質表現を以下のように決めつけた。
1刷・198刷 p48-49
| ● |
まじめ人間で、向上への努力を怠らない。 |
| ● |
集団の帰属意識が高く協調精神に富む。 |
| ● |
ルールを尊重し、倫理感、潔癖感も強い。 |
| ● |
几帳面で神経が細かく働き、緻密な仕事に向く。 |
| ● |
堅実で、羽目を外すことがない。 |
| ● |
忍耐心が強く、犠牲的精神もあり、縁の下の力持ちの役割りにも、よく耐える。 |
| ● |
責任感、義務感、使命感が旺盛である。 |
これをA型気質の特性と出来るか否かは、息子の俊賢(A型)の気質において第三報で詳細に検討する。
= 参考文献 =
[1] ザ・ビギニング・ブック 編集:日本世相史研究会 自由国民社 1984
[2] 現代風俗史年表 増補2版 編集:世相風俗観察会 河出書房新社 2001
[4] オフィシャル・ブック THE ゴルゴ学 小学館 2000
[5] ゴルゴ13の秘密 世界ゴルゴ調査会東京支部 データハウス 1993
[6] 日本大学研究紀要 No.46 「『血液型気質相関説』と『血液型人間学』の心理学的研究U」 p116-119
大村政男 1993
= 参考通俗本 =
■ 血液型でわかる相性 能見正比古 0200-110100-3822 第1刷 青春出版社 1971
■ 血液型でわかる相性 能見正比古 0200-110105-3822 第198刷 青春出版社 1982
■ 血液型でわかる相性 能見正比古 ISBN4-413-01101-5 第235刷 青春出版社 1989
[6] 血液型人間学 p34 能見正比古 サンケイ新聞社出版局 1973
[7] 血液型活用学 p72 能見正比古 サンケイ出版 1976
[8] 血液型おもしろデータバンク p10-19に収録 能見俊賢 現代出版 1984
= 取材協力 =
[3] タカラトミーお客様相談室
電話で 「リ、リカちゃんの血液型を教えて下さい!」 と聞くのは、かなり恥ずかしかったです。
■ 暫定非営利活動邦人 血液型偏見差別研究センター ■